先日、わんちゃんの多発性乳腺腫瘍に対する片側乳腺全切除術を行いました。

どの動物病院でもやられるような手術ですが、個人的にとても感動したことがありました。

感動を語る前に、乳腺腫瘍の治療方針と手術内容をお話しないと伝わりにくいのでご紹介いたします。

まず、私の知る限り(2019年時点での報告において)乳腺の腫瘤の取り方による生命予後に差は無いとされています。ただし、乳腺が残っていると6か月以内に新病変が形成されることが多いです。

よって当院では腫瘍専門医の見解に従い以下のような手術を第一選択とさせていただいております。

①5㎜未満の1つだけの出来物→経過観察
②5~10㎜の1つだけの出来物→出来物とその周囲1cmの組織を切除
③10㎜以上の1つだけの出来物→出来物とその周囲1~2cmの組織を含んだ乳腺切除
④多発性の出来物→片側あるいは両側乳腺全切除

以前は乳腺腫瘍といえば、再発を防ぐために片側乳腺全切除術をできるだけ行っていたのですが

この手術、けっこう痛いんです。

しかも合併症も起こりやすいのです。

これは手術の上手い下手はあまり関係が無く、ごく稀にDICといった致死的な合併症も起こることがあるのです。教科書にも載るくらいです。

これからご紹介するように、がっつり皮膚が欠損するためと考えられます。

また、痛みのストレスが

胃腸運動を減弱させてしまったり、
感染からの生体防御能を低下させてしまったり、
サイトカインストームによって全身性炎症症候群から多臓器障害を引き起こしてしまったり

とするわけです。

なので本手術には鎮痛がとても重要な役割を担っているのです。

今まで勤めた病院ではある程度使える薬剤が限られており、実践できなかったのですが

本症例はずっとやってみたかったフェンタニル-リドカイン-ケタミン併用鎮痛法

通称FLKを使用してみました。

術後眼を覚ましてすぐの動画です

覚醒から30分ほどの様子

まっすぐ立ってしっぽを振っている…

凄い!!

感動ポイントが伝わりにくいのですが、私は鎮痛や麻酔法が好きなのです。

使える薬はいろいろ組み合わせて、どの方法がよいかずっと試行錯誤してきたのです。

それでも手術直後は震えて立てなかったり、立ててもここまで機嫌がいい事はなかったのです…

本症例は手術中も麻酔の用量を過度に増やすことなく、血圧もずっと安定しておりました。

いつもこの様な疼痛管理ができれば良いなと思います。

ということで、とっても感動したので思わずブログにご紹介してしまいました。

クッキーちゃん、ありがとうございました!とってもがんばりました!

以下に手術内容も掲載しますが、上記の通りややショッキングな内容になりますのでご注意ください。

注意!手術画像が表示されます!

ご参考になれば幸いです。

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