数ヶ月前に乳腺腫瘍を切除したワンちゃんの症例ですが、

あまりにも意外な結果でした。(タイトルでネタバレしているのですが)

チワワちゃんのお腹に、1ヶ月で急にここまで大きくなったできものが出来たとの事でした。

細胞診にて腺細胞と思われる上皮系細胞集塊が得られたため、乳腺腫瘍であると判断いたしました。

レントゲン、エコーにて明らかな転移所見を認めなかったため、手術のお話しをしました。

ここまでで、私は悪性の乳癌と思ってお話しをしました。

1ヶ月でここまで大きくなるのであれば、悪性度(グレード)は高そう
取り切るためには出来物の周囲2cmを確保したいところだけど外陰部にまで及んでしまうから根治的切除は難しいかも
でも放置しておけば確実に将来的にワンちゃんの身体的負担や飼い主様の精神的負担は大きくなる(膿んで出血するから)

など色々考え、相談の上切除することになりました。

他の部位にも乳腺腫瘍があったため、片側乳腺切除術という、片側の乳腺を全て切除する術式です。

赤で囲ったラインが切除範囲です

そして無事手術は終わり、病理検査の結果

【診断】乳腺(右第4-5、左1-5):乳腺腺腫(単純型/複合型)
【所見】乳腺(右第4-5、左1-5):切除された乳腺の全域において周囲との境界が明瞭な腫瘍巣が複数 形成される。周囲の乳腺には重度の過形成を認め、一部の乳腺小葉は結節状となる。 腫瘍巣では、乳腺の腺上皮に由来する立方~類円形の腫瘍細胞が腺腔形成性、管状、乳頭状に 増殖する部位と、筋上皮に由来する紡錘形~星芒状の腫瘍細胞が粘液腫状に増殖する部位が観察 部位によって様々な程度に混在して認められる。これらの腫瘍細胞は、好酸性に染色される細胞 質を少量有し、核は類円形~楕円形で核小体は不明瞭。腫瘍細胞の異型性は低く、核分裂像は 稀。腫瘍の浸潤性は乏しくサージカルマージンも明瞭。

要約しますと、「良性で取り切れてますし転移もありません」ということでした。

この様な乳腺腫瘍は初めて見たため、かなり驚きました。

非常に稀な例とは思いますが、良性だからと言って様子を見て良いとは言えないと強く思う出来事でした。

ちなみに、術後の傷はこの様な感じです

いずれにしても、大きくなる前に、転移する前に切除が1番です!

参考になれば幸いです

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