先日、紐状異物を飲み込んでしまった猫ちゃんがご来院されました。ネコちゃんは紐のようなものでよく遊びますので、よく飲み込んでしまいます。

嘔吐が始まってから4日目で、その間食事も飲水もできず重度脱水状態での御来院でした。筋肉の断続的な痙攣(ミオクローヌス)も出ており、非常に重篤な状態であったためすぐに静脈点滴を行い、まずは状態の回復に努めました。

脱水が補われるととても元気になりましたが、問題は解決しておりません。エコーでは明らかに腸内に紐状のものが観察され、腸を引きつらせております。また、元気になるとともに発熱し、すでに腹膜炎を起こしている可能性が…

すぐに開腹して、腸を確認しました。

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案の定、腹水もやや多く出ており、腸は全体的に出血、壊死を起こし始めている状況でした。壊死が少しでも疑われる部分は「切除」と「吻合」を行う必要があると言われております。今回の場合、あまりにも広範囲に及ぶ切除が必要でした。

しかし、起こってしまったものはしょうがありません。異物だけ摘出しても、再び腸が穿孔して腹膜炎を起こす可能性があります。よって、十二指腸の終わりから回腸の手前まで、ほぼ全ての空腸を切除することとしました。

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切除した腸。黒くなっている部分が壊死が疑われる部位。横に異物(紐)も写っています


十二指腸の終わりの部分と回腸の手前で腸を吻合し、お腹の中を綺麗に洗って手術終了としました。術後はすぐに熱も下がり、とても元気になりました。

次の日から飲水を開始し、さらにその次の日から消化に良いご飯を始めました。しかし、あまり食いつきが良くありません。通常ならすぐに食べ始めるはず…エコーで確認すると、胃から十二指腸の動きが良くありませんでした。

胃には胃液が貯まっている状態です。これでは食べられません。胃腸運動改善薬を強化してみましたが変わりません。エコー検査では腸の吻合部に問題は見られませんでしたが、もう一度開腹手術を行い確認させていただくこととしました。

やはり腸の吻合部はしっかりくっついていますが、念のためもう少し通りが良くなるように再吻合してみました。

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胃もパンパンに膨れていたので、チューブを入れて内容物を抜去。これでも胃が動かなければ本格的に胃の麻痺性イレウスかもしれません。
果たして、術後、やはりすぐに液体が溜まってきてしまいました。

次の日の朝、鼻からチューブを入れて溜まった胃液を抜去してみると…

こんなに溜まっていました。

胃液を抜くとすぐにご飯を食べ始めますが、一定量食べるとすぐにやめてしまいます。ベタネコールというお薬も追加してみて、様子をみてみましたがなかなか良くなりません。

結局、胃腸が動き始めるのに5日ほどかかりました。重度に胃腸が障害されると、胃腸が動かなくなることがあり、非常に治療が難航する場合があります。

食事だけでなく、水を飲んでもすぐに吐いてしまうという場合はすぐに動物病院にお連れください。

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