多発性嚢胞腎は私もよく診断する病気です。現状治ることはなく、必要に応じて一般的な慢性腎臓病の治療を行う必要があります。

飼い主様にとって、本病気に罹患した猫ちゃんと暮らしていく上で重要な情報が出たので共有いたします。

猫の多発性嚢胞腎(PKD)寿命分析 – 日本での研究結果

🐱 猫の多発性嚢胞腎(PKD)寿命分析

日本における初の大規模追跡調査結果

研究概要: 2008年1月〜2024年5月、岩手大学獣医教育病院にて実施
対象: PKD1変異体陽性の猫300匹を対象とした後方視的コホート研究
著者: ENOMOTO et al., 2025
12.7
出生時平均余命
(年)
20.7%
研究期間中の
死亡率
8
中央死亡時年齢
(年)
77.4%
尿毒症による
死亡率

累積生存率

累積生存率は6〜7歳で有意に低下し始めることが判明

95.1%

5年生存率

61.3%

10年生存率

34.0%

15年生存率

品種別平均余命

ペルシャ

13.5年

アメリカンショートヘア

12.8年

スコティッシュフォールド

12.5年

その他の雑種猫

12.4年

日本猫ミックス

11.1年

エキゾチックショートヘア

10.8年

年齢別死亡数分布

最も多くの死亡が観察されたのは7歳(死亡した62匹中13匹)

3
4歳
6
5歳
8
6歳
13
7歳
11
8歳
4
9歳
5
10歳
1
11歳
6
12歳

主要な発見

🔬 早期発症の可能性: PKDは早ければ3歳で発症する可能性があり、若齢期における定期的な超音波検査が重要
⚧ 性別による差: オス猫(去勢・未去勢問わず)はメス猫より長生きする傾向(去勢オス13.7年 vs 未避妊メス11.8年)
📊 一般猫との比較: PKD猫の平均余命(12.7年)は一般的な日本の猫(14.4年)より短い
🏥 臨床的意義: 成猫期(6〜7歳)での定期的な健康診断の重要性が示唆された

研究の意義

本研究は猫のPKDにおける寿命分析を世界で初めて実施し、この遺伝性疾患の予防と管理プログラムの改善に向けた重要な基礎データを提供しました。


特に、早期診断と介入戦略の開発、および飼い主への情報提供において、この定量的データは大きな価値を持ちます。

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